2014年 04月 12日
小池真理子さんの「捨てる」を聞いて
ラジオを聞くともなくつけたらラジオ文芸館で小池真理子さんの「捨てる」という短編を朗読していた。
これが見事な作品であった。他の作品もそうかと思うが小説をあまり読まないので・・・。
女がマンションの自分のものを捨てたり、まとめたりすることろから始まる。要するに女は建設会社の社長である夫から黙って逃げようとしているのである。夫はちょうど出張で女は今日荷物をまとめ、地元の業者ではない、回収業者に頼んできてもらう。
その回収業者というのはまだ若い男性で、いつか前に物の処分を頼んだら、引っ越しもやりますので、という話で覚えていた人だ。地元の業者では知られてしまうため、知らない人に頼んだ。
このまだ若い生き生きとした男の子の描写が卓越している。気さくで、女が「自分の引っ越しのことは誰にも言わないで」と言ったときにも、しばらく沈黙のあと「だいじょぶです」と元気に言う。
昼ごはんを出前で取ると目立つので女はコンビニでおむすびやサンドイッチを買ってきて、家にあったコーヒーを入れてあげる。男の子はほんとうにおいしそうに飲む。その話の中で、その子はまだ28歳だがすでに二人の子供がいる、毎日朝五時に出かけ、回収の仕事に回って午後早くに帰宅する。奥さんが作った夕食とビールを飲み、子供と遊んだりしながら床につく。そんな毎日に満足していると話す。
女は自分の人生と比べる。夫はもう三人も外に女をつくった。いつも自分に子供ができないことをなじる。
女はいっそ夫がよそに子供をつくってくれればと思う。女はパートに出た先で知り合った花屋の店員と知り合い、なじみの仲になる。体だけの関係となり、女は彼と別れる。そして家を出る決心をする。
と、まあこんな筋書きであるが、女が前にちょっと覚えていた回収業の男の子を思い出すくだり、連絡をして、「行く先は東京なの・・・中野」とおずおずと言うくだり。見積もりを取って、女が倍払うと言ったときも、男の子は「とんでもないっす」と言って受け取らない。女がつい、自分は夫から逃げだすことをもらした時の男の子の反応・・・。ちょっとびっくり、でもすぐに自分にもどる。
その関係、会話の進み具合がすごくいい。東京まで乗せていってくれる、と頼んだ時の、もちろん、といった男の子の反応。
そして最後は桜吹雪の舞うなかを女が車に乗るところで終わる。この人はどうなるんだろ、まったくつてのない東京に出て。中野の住まいからスーパーのパートでも探すのだろうか?
男の子と女の人生のすれ違い。こんな断片ってよくあるよな、と思う。それで男の子の単純な人生もまた、いつどうなるかもわからない。
* * * * *
本日良い天気で町では男子高校生の和太鼓の演技があった。これはあちこちで見たことがある。歩行者天国になっていて、お腹に響くような音で元気よく太鼓を鳴らす。16,7の男の子たちである。昔だったらもう少したくましいのだろうが、今の男の子である。なんとなくやさ男風の子が多い。
でもエネルギーが感じられて、ふっと先の回収業の男の子を思い出した。
「捨てる」を朗読したアナウンサー山本志保さんも素晴らしかった。男の子の言葉と女の言葉の感じがすごーく出ていて・・・。
これが見事な作品であった。他の作品もそうかと思うが小説をあまり読まないので・・・。
女がマンションの自分のものを捨てたり、まとめたりすることろから始まる。要するに女は建設会社の社長である夫から黙って逃げようとしているのである。夫はちょうど出張で女は今日荷物をまとめ、地元の業者ではない、回収業者に頼んできてもらう。
その回収業者というのはまだ若い男性で、いつか前に物の処分を頼んだら、引っ越しもやりますので、という話で覚えていた人だ。地元の業者では知られてしまうため、知らない人に頼んだ。
このまだ若い生き生きとした男の子の描写が卓越している。気さくで、女が「自分の引っ越しのことは誰にも言わないで」と言ったときにも、しばらく沈黙のあと「だいじょぶです」と元気に言う。
昼ごはんを出前で取ると目立つので女はコンビニでおむすびやサンドイッチを買ってきて、家にあったコーヒーを入れてあげる。男の子はほんとうにおいしそうに飲む。その話の中で、その子はまだ28歳だがすでに二人の子供がいる、毎日朝五時に出かけ、回収の仕事に回って午後早くに帰宅する。奥さんが作った夕食とビールを飲み、子供と遊んだりしながら床につく。そんな毎日に満足していると話す。
女は自分の人生と比べる。夫はもう三人も外に女をつくった。いつも自分に子供ができないことをなじる。
女はいっそ夫がよそに子供をつくってくれればと思う。女はパートに出た先で知り合った花屋の店員と知り合い、なじみの仲になる。体だけの関係となり、女は彼と別れる。そして家を出る決心をする。
と、まあこんな筋書きであるが、女が前にちょっと覚えていた回収業の男の子を思い出すくだり、連絡をして、「行く先は東京なの・・・中野」とおずおずと言うくだり。見積もりを取って、女が倍払うと言ったときも、男の子は「とんでもないっす」と言って受け取らない。女がつい、自分は夫から逃げだすことをもらした時の男の子の反応・・・。ちょっとびっくり、でもすぐに自分にもどる。
その関係、会話の進み具合がすごくいい。東京まで乗せていってくれる、と頼んだ時の、もちろん、といった男の子の反応。
そして最後は桜吹雪の舞うなかを女が車に乗るところで終わる。この人はどうなるんだろ、まったくつてのない東京に出て。中野の住まいからスーパーのパートでも探すのだろうか?
男の子と女の人生のすれ違い。こんな断片ってよくあるよな、と思う。それで男の子の単純な人生もまた、いつどうなるかもわからない。
* * * * *
本日良い天気で町では男子高校生の和太鼓の演技があった。これはあちこちで見たことがある。歩行者天国になっていて、お腹に響くような音で元気よく太鼓を鳴らす。16,7の男の子たちである。昔だったらもう少したくましいのだろうが、今の男の子である。なんとなくやさ男風の子が多い。
でもエネルギーが感じられて、ふっと先の回収業の男の子を思い出した。
「捨てる」を朗読したアナウンサー山本志保さんも素晴らしかった。男の子の言葉と女の言葉の感じがすごーく出ていて・・・。
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from スーパーコピー,スーパー..
at 2019-10-14 00:51
by takanak
| 2014-04-12 14:07
| 日々の暮らし
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